ウイルス
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54 巻, 1 号
June
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 瀬谷 司, 新開 大史, 松本 美佐子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    TLRファミリーはロイシンリッチリピート (LRR) の細胞外領域と細胞内のTIR (Toll/IL-1 R homology) ドメインからなる. TLRはリガンドを認識すると細胞内のTIRドメインへアダプター分子MyD88などをリクルートし, NF-κBとMAP kinaseを活性化し, 最終的にサイトカインやケモカインなどを産生誘導する. 一方, 骨髄性樹状細胞 (mDC) ではTLRによるIFN-β産生やIFN誘導遺伝子の発現, 樹状細胞の成熟化などが誘起されるが, これらはアダプター分子, MyD88非依存性に起こる. TLRのIFN-β産生系としてはdsRNA刺激によるTLR3依存性経路, LPS刺激によるTLR4を介したIFN-β産生経路などがある. リンパ球様樹状細胞 (pDC) ではTLR7/TLR9刺激でIFN-αがMyD88依存性に誘導される. 我々は, 本稿でTLR3, TLR4を介したIFN-β産生に関与するアダプター分子の構造と機能を総説し, 新規のIFN-β誘導経路に言及する. 併せてウイルス成分認識性のTLRがtype I IFNを誘導するシグナル経路, これらの経路とウイルス感染が誘起する抗ウイルスの細胞応答の連携を概説する.
  • —筏に乗ったウイルス膜蛋白—
    竹田 誠
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    細胞膜の脂質は均一な二次元の流体を形成しているのではなくて, 脂質ラフトと呼ばれるスフィンゴ (糖) 脂質とコレステロールに富んだ微少な膜ドメインを形成して, 細胞膜の機能発現に積極的に関わっている. 近年, 多くのウイルスがその脂質ドメインを利用して増殖していることが明らかになってきた. インフルエンザウイルスのふたつの膜貫通型糖蛋白ヘマグルチニン (HA) とノイラミニダーゼは, ともに, ラフトへの親和性を持っているが, HAが, ラフトへの親和性を介して, 膜上でクラスターを形成することが示された. ラフトへの親和性を欠いたHA蛋白をもつ組換えインフルエンザウイルスは, 粒子中のHA含有量が少なく, 細胞膜との融合能が低下するため感染性が低く, 複製効率が顕著に低下している. すなわち, インフルエンザウイルスが, 脂質ラフトを, HA蛋白の集積装置として, また, 出芽部位への能率的な輸送装置として利用することにより, 効率良く複製することが明らかとなった.
  • 山田 章雄
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    現在ヒトに感染することが知られている感染症は分類上の種で1415に上る. このうち868種 (61%) が人獣共通感染症であるとされている. すなわちヒトが感染する病原体の半数以上はヒト以外の動物にも感染する. また, 新興感染症の75%は人獣共通感染症である. 人獣共通感染症の病原体のうちの33%がヒトからヒトへ感染しうる. 公衆衛生上の問題となる病原体は一端動物からヒトに伝播した後, ヒト間でさらに伝播できるこの33%の病原体であるといえる.
    感染症が新たに勃興してくる原因として地球人口の激増, 生態系への干渉, 航空機輸送の発達に伴うヒト, 動物, 物の国際間移動の高速化, 気候の変化などがあげられる. 野生動物が介在する感染症は生態系との関わりが深く, たとえ僅かであっても環境の変化がエコロジカルニッチに与える影響は無視しがたく, ニッチを利用する動物の生態系が撹乱されることにつながる. 生態系が撹乱すると例えば捕食動物が減少し, 様々な病原体を保有している可能性のある齧歯類などが異常繁殖し, 結果的に齧歯類に由来する感染症が発生することになる.
特集1 [第51回ウイルス学会学術集会シンポジウム
「ポストゲノム時代のウイルス学」]
  • 渡辺 慎哉
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    ヒトゲノムプロジェクトは, その成果として, かつては約10万と推定されていたヒト全遺伝子が3万数千~4万種類の遺伝子座から構成されることを明らかにした. さらに, 塩基配列の解明そのものに加えて, 初めて生命現象を全体として俯瞰・解析できるシステムの開発も促した. その代表がDNAマイクロアレイである. この技術を用いることにより, ほとんどすべての遺伝子の発現状態 (トランスクリプトーム) を一度に解析すること (トランスクリプトーム解析) が可能となった. マイクロアレイで得られる知見は, 極論すると, 遺伝子発現レベルを唯一の指標とした, 数値による生命現象の記載・記述である. これにより, 我々ウイルス学者は, ウイルス感染細胞内でおきている現象の全体像を初めて探究できるツールを手にしたといえる. ここでは, 各種ウイルスを代表してヒトサイトメガロウイルス (HCMV) を取り上げる. 我々が独自に開発した合成DNAマイクロアレイシステムを用いて取得した, ウイルス感染細胞のウイルス遺伝子および宿主遺伝子の同時並行かつ包括的な発現プロファイルを例にウイルス感染細胞のトランスクリプトーム解析を紹介する. さらに, 複数種類のウイルスと複数種類の細胞の組み合わせを同一プラットフォーム上で比較解析する 「細胞応答の比較ウイルス学」 を提案する. ある特定のウイルスを各種細胞に感染させるとき, あるいは, ある特定の細胞に各種ウイルスを感染させるとき, ウイルスによる違い・細胞による違いがあるのかないのか, あるとすればそれはどのようなものか, が明らかとなるはずである.
  • 山口 由美
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    HIV-1の表面タンパク質であるgp120は, ウイルスの標的細胞への侵入において重要な役割がある一方, タンパク質の変異が免疫系による認識からの逃避に関わっている. つまり, アミノ酸の変化には生存に不利になる (負の淘汰) 場合と有利 (正の淘汰) になる場合の両方がある. このことは, アミノ酸変化の起こる場所, どんなアミノ酸に変わるか, によって事情が違うはずであり, 各アミノ酸サイトの機能や立体構造上の位置と密接な関係にあると考えられる. 筆者らは, HIV-1 gp120の各アミノ酸サイトの多型の再評価, 分子進化進化機構, および適応進化に関する解析研究を行っており, 特に以下の2つ問題に着目した. 1) 保守的な進化あるいは適応的な進化, 2) HIV-1の株間による標的細胞の違いに関連しているgp120のアミノ酸サイトはどこか. 利用出来る塩基配列データを用いてアミノ酸サイトごとの詳細な解析を行い, 生物学的情報やタンパク質の立体構造の情報との対応を調べた. 得られたデータや結果は, 進化的な理解に分子生物学的根拠を与えるだけでなく, 機能予測につながることもある.
  • 北所 健悟
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    CD81は, テトラスパニンファミリーに属する細胞表面の抗原の一つであり, C型肝炎ウイルスとの結合が強いことから, C型肝炎ウイルスの感染に関与すると考えられている. CD81分子は, 236個のアミノ酸からなる膜4回貫通型の膜蛋白質であり, 2つの細胞外領域と3つの細胞内ドメインおよび4つの膜貫通疎水性領域から形成されている. このうちCD81の細胞外領域の1つである LEL ドメインは, 91個のアミノ酸からなり, 他のテトラスパニンと同様に2つの S-S 結合を有する. 我々は, ヒトのCD81のウイルス結合ドメインであるLEL (CD81-LEL) のX線構造解析を行い, この立体構造が全く新規なモチーフであることを見出した. また CD81-LEL とHCVウイルスとが相互作用すると思われる部位を同定した. CD81-LELは結晶中でダイマーを形成し, 各々のサブユニットは5本のα-ヘリックスとそれをつなぐループ部分で構成され, stalk と head サブドメインからなる “mushroom-like” の立体構造をとっていた. しかしながら, この各々のサブユニットは立体構造的には少し違った構造を取っており, 活性型と2つの内の1つのS-S結合が還元された不活性型のコンフォメーションを取っていた. HCV の結合に関与するアミノ酸残基は, headサブドメインにある疎水性クラスターに集中しており, これらの側鎖は外側に突出した形で存在し, 結晶内では他の分子とパッキングしていた. 従って, この特徴のある疎水性クラスターが, HCVのエンベロープ糖蛋白質E2の認識部位である可能性が示唆された.
特集2 [第51回ウイルス学会学術集会シンポジウム
「ウイルス学から臨床医学へ」]
  • 小澤 敬也
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    遺伝子治療臨床研究の停滞を打ち破ったのがX連鎖重症複合免疫不全症 (X-SCID) に対する造血幹細胞遺伝子治療で, 明瞭な治療効果が得られたことから大きな脚光を浴びた. しかしその後, この遺伝子治療を受けた患者2名が白血病を発症し, レトロウイルスベクターによる遺伝子導入が引き金となったことから深刻な問題となった. すなわち, 挿入変異によるLMO2遺伝子の活性化が白血病発症の一因となったことが明らかにされた. 今後の対策としては, レトロウイルスベクターの安全性を高めること, 部位特異的遺伝子組込み法の開発などの基盤研究が重要となる. また, より多くの疾患で造血幹細胞遺伝子治療の効果を上げるには, 選択的増幅遺伝子 (SAG) などの細胞制御技術の開発も必要である. その他, 安全性の観点からは非病原性ウイルスに由来するAAVベクターの臨床応用が期待される. このベクターは神経細胞・筋細胞・肝細胞などへの遺伝子導入に適しており, 例えば, パーキンソン病の遺伝子治療などへの応用が検討されている. 遺伝子操作技術は再生医療の領域でも必須であり, さらなる開発研究の推進が望まれる.
  • 馬場 昌範
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    Highly active antiretroviral therapy (HAART) の確立により, HIV-1感染症の予後は劇的に改善した. しかし, 一方でHAARTの問題点も明らかになってきている. その中の1つである薬剤耐性ウイルスの出現を克服する手段として, 既存の薬剤とは異なる特性を有する新しい逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬, そして, これ以外の分子を標的とする抗エイズ薬について, 今もなお世界中で活発な研究が続けられている. 最近開発された新しい逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼ阻害薬は既存の耐性ウイルス株に対しても有効であり, さらに通常1日1回投与で十分である. さらに, 初めてのウイルス侵入 (膜融合) 阻害薬も認可された. 本薬剤はこれまでの薬剤とは標的が異なるため, 逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬に高度耐性を示すHIV-1にも同様な効果を発揮する. また, HIV-1のコレセプターであるCCR5を標的とした抗HIV-1薬の臨床試験が行われており, さらにインテグレースやウイルスの遺伝子発現, そしてウイルス粒子のアセンブリーを阻害する薬剤も同定されている.
  • 神奈木 真理
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    成人T細胞白血病 (ATL) は, ヒトT細胞白血病ウイルスI型 (HTLV-I) 感染者に発症する予後不良の悪性腫瘍である. HTLV-I感染者の末梢血リンパ球を用いた免疫解析や動物実験結果から, HTLV-I Tax特異的細胞傷害性T細胞 (CTL) が抗腫瘍機構の1つであることが示されてきた. HTLV-I感染者のうちATLを発症するものは約5%であり, 疫学的には垂直感染と高プロウイルス量 (感染細胞数) がATL発症と関連している. HTLV-I垂直感染の主経路は母乳を介した経口感染である. ラットへの実験的HTLV-I経口感染では, 宿主HTLV-I特異的T細胞応答は低いにもかかわらず持続感染プロウイルス量は高くなり, 両者は逆相関した. これは, 経口感染によるHTLV-I特異的T細胞寛容あるいは低応答が感染細胞数の増大を許すことを示しており, 疫学的ATL発症リスクとされる垂直感染と高プロウイルス量を免疫学的に関連付けるものである. さらに, 経口感染個体のHTLV-I特異的T細胞免疫の低応答性は免疫刺激により高応答性に転換した. これは免疫賦活によるATL発症リスク回避の可能性を示唆する. 興味深いことに, Tax特異的CTLの低応答性から高応答性への転換は, 同種造血幹細胞移植後に寛解を得たATL患者でも認められた. これらの観察は, Taxを標的とした免疫賦活によるATL発症予防および治療の可能性を示唆している.
  • —サルを用いたモデル—
    速水 正憲, 堀内 励生
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    HIVのワクチン開発研究は最新のウイルス学・免疫学の基礎知見に基づいて, 様々な創意工夫により取り組まれている. ただし有効なものの実用化には悲観的な空気が強い. その開発の困難さの理由の一つとしてHIVが感染する実験動物の欠如が挙げられる. 当研究室ではSIVをベースにしてHIV-1遺伝子をもちサルに感染するキメラウイルス (SHIV) を作成してきた. その中にサルには全く病原性を示さず感染防御免疫を付与する弱毒性のものがあった. 現在, それを出発材料としてヒトに応用可能な弱毒生ワクチンの開発を行っている. そもそもウイルスのワクチンでは麻疹・ポリオ等で弱毒生ワクチンが最も有効であることが示されてきた. しかし, HIVについては弱毒ウイルスが存在しうるものなのかは不明であり, 例え存在したとしても強毒化の可能性から危険視されて, その開発研究が無視されている. 果たしてHIVで弱毒生ワクチンが可能なのかどうかを当研究室におけるサルを用いたSHIVの病原性に関する研究の紹介とともにHIV/SIVの起源・進化から弱毒HIVの可能性を推論してみたい. 弱毒・強毒性を問い, 弱毒ウイルスを手に入れることは単にワクチン開発といった応用研究ではなく, 「なぜHIVがエイズを起こすのか」 といった根本命題に迫る基礎研究そのものと言えよう.
平成15年度杉浦賞論文
  • 五藤 秀男
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 83-91
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    A型インフルエンザウイルスにおいて赤血球凝集素 (HA) の開裂は感染性に不可欠であるため, HAはウイルスの病原性を決定する重要な因子である. トリインフルエンザウイルスでは, 病原性に関与するHAの役割についてよく調べられてきたが, 哺乳動物由来インフルエンザウイルスでは, ほとんど未解決の問題である. 著者らは, ヒト由来でマウスの経鼻接種において呼吸器以外の多臓器で感染増殖するA/WSN/33 (WSN) 株を病原性解析のモデルとした. 解析の結果, WSN株のノイラミニダーゼ (NA) がシアリダーゼ活性とは関係なく, 細胞表面でplasminogen受容体として機能してplasminへの活性化を促進し, HAを開裂することを見いだした. さらに, NAとplasminogenの結合には, カルボキシル末端のLysの存在と146番の糖鎖付加の欠損が必要であることがわかった. リバース・ジェネティクス法で作製したplasminogen結合活性を欠損させたNAをもつ変異ウイルスは, マウスに対し弱毒化した. これらの結果から, NAのプラスミノーゲン受容体としての新規機能はWSN株の病原性を決定すると結論した.
トピックス
  • 喜田 宏
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    2003年から2004年にかけて日本を含むアジア9カ国で発生した一連の高病原性鳥インフルエンザは, 感染症に国境がないこと, 日本の鶏群にも本症発生のリスクがあることに加えてウイルスの侵入をいち早く検出するために年間を通した家禽のモニタリングが必須であることを改めて諭す教訓となった. アジアでは今なお高病原性鳥H5N1インフルエンザウイルスによる家禽の被害が断続している. さらにタイとベトナムではそれぞれ12名および22名のヒトがH5N1ウイルスに感染し, 8名および15名が死亡した. 今後, 再び高病原性鳥インフルエンザが日本に飛び火する可能性を否定できない状況にある. 家禽における鳥インフルエンザウイルスの感染を早期に摘発, 淘汰することによって家禽の被害を最小限にくい止めるとともに, ヒトの健康と食の安全を守ることが鳥インフルエンザ対策の基本である.
  • 水谷 哲也
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 97-105
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    2003-2004年の冬に猛威をふるった新型肺炎の重症急性呼吸器症候群 (SARS ; Severe Acute Respiratory Syndrome) は, 今冬には散発的な患者の発生にとどまった. しかし, 感染源となる動物も特定されておらず再び大流行する恐れもある. SARSの流行から一年あまりたった現在, 一日一報のペースで論文が掲載されている. SARS-CoVの研究には従来のコロナウイルスの研究者に加えて他のウイルスの研究者たちが参入し, 彼らの技術を駆使して成果を挙げている例が多い. 現在のSARSに関する研究の主流はワクチンの開発・治療薬の探索・検査法の確立である. 本稿では, これらの研究について最新の情報を提供する.
  • —遺伝子の簡易・迅速な増幅法—
    牛久保 宏
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 54 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/06/17
    ジャーナル フリー
    遺伝子検査は感染症診断をはじめとして, さまざまな分野で利用されている. しかし, 実際の検査に十分に広く普及しているとはいえない. これは煩雑な操作, 高コストが主な要因となっている. 我々は, 従来の遺伝子増幅法代わる簡易, 迅速な増幅法としてLAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification) 法を開発した. LAMP法には (1) 全ての反応が等温で進行する, (2) 増幅効率が極めて高く, 大量の増幅産物を得ることができる, (3) 極めて高い特異性を持つなどの特徴を有す. また, 標準の増幅時間は1時間であるが, 新たなループプライマーを追加する迅速法により, 30分以内の増幅が可能となった. 更に, 検出においては, 増幅反応の副産物であるピロリン酸マグネシウムの白濁を目視で確認することにより, 検出のための試薬・機器を使用せずに標的遺伝子の有無を判定することもできる. これらの特長を組み合わせることで, LAMP法は臨床現場での遺伝子検査, あるいは食品, 環境分野での迅速検査が実現可能であり, その他様々な領域での遺伝子検査に展開できるものと考える.
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