ウイルス
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特集1 [第51回ウイルス学会学術集会シンポジウム
「ポストゲノム時代のウイルス学」]
2. HIVの遺伝的多様性とバイオインフォマティクス
山口 由美
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2004 年 54 巻 1 号 p. 33-38

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抄録
HIV-1の表面タンパク質であるgp120は, ウイルスの標的細胞への侵入において重要な役割がある一方, タンパク質の変異が免疫系による認識からの逃避に関わっている. つまり, アミノ酸の変化には生存に不利になる (負の淘汰) 場合と有利 (正の淘汰) になる場合の両方がある. このことは, アミノ酸変化の起こる場所, どんなアミノ酸に変わるか, によって事情が違うはずであり, 各アミノ酸サイトの機能や立体構造上の位置と密接な関係にあると考えられる. 筆者らは, HIV-1 gp120の各アミノ酸サイトの多型の再評価, 分子進化進化機構, および適応進化に関する解析研究を行っており, 特に以下の2つ問題に着目した. 1) 保守的な進化あるいは適応的な進化, 2) HIV-1の株間による標的細胞の違いに関連しているgp120のアミノ酸サイトはどこか. 利用出来る塩基配列データを用いてアミノ酸サイトごとの詳細な解析を行い, 生物学的情報やタンパク質の立体構造の情報との対応を調べた. 得られたデータや結果は, 進化的な理解に分子生物学的根拠を与えるだけでなく, 機能予測につながることもある.
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© 2004 日本ウイルス学会
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