抄録
ポリオウイルスは急性灰白髄炎のウイルスであり,脊髄前角の運動神経細胞など中枢神経系に感染して重篤な病変を生じさせるが,神経系以外の組織ではよく増えることができない.in vivoでは厳格にこの組織特異性が存在するにも関わらず,in vitroでは霊長類の単層培養細胞ではどの組織に由来したものであれ殆ど例外なくポリオウイルスは非常によく増殖する.細胞がウイルス感受性を獲得するには生体内からシャーレへ環境変化の過程で,なんらかの細胞内環境が変化することが必要であると考えられていた.この疑問は永らく未解決のままであったが,我々は正常の生体内の状態で維持されている素速く,かつ強力なIFNの応答能力が培養細胞においては低下するためウイルス感受性を獲得するようになることを明らかにした.