2010 年 60 巻 2 号 p. 237-246
エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus,EBV)とカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus, KSHV, human herpesvirus 8, HHV-8)はガンマヘルペスウイルスのメンバーであり,ともにリンパ球に感染し,リンパ腫などの悪性腫瘍の原因となる.8つのヒトヘルペスウイルスの中で発癌と関連する唯2つのウイルスであり,長らく発癌との関連を中心に研究が進んできた点は,他のヒトヘルペスウイルスと大きく異なる.EBVが発見されたのが1964年,KSHVは1994年に発見されたが,KSHVの解析がEBVを参考に急速に進んだ結果,現在,この2つのウイルスに関する知見を比べても30年の差は感じない.近年の2つのウイルスの研究に共通する大きな進歩は,ウイルスの発現するsmall RNAに関する知見が広がったことであろう.EBVとKSHVは他のウイルスに先駆けて,その遺伝子上にマイクロRNAをコードされていることが明らかになった.一方で,腫瘍化との関連についてはいまだに明らかでない部分が多い.本稿ではこれらのウイルスの基本的な知識を要約した上で,近年に明らかになった主なウイルス学的知見を概観する.