抄録
真核生物のマイクロRNA (miRNA)にはウイルスゲノムを標的にするものがあり,ウイルスゲノムの中にもmiRNAがコードされるような例が蓄積して来た.これら低分子のRNAはウイルスの感染や増殖に重要な役割を担っている.また,生殖細胞ではpiRNAとよばれる低分子RNAが内在的なトランスポゾンの発現を抑制している.さらに,古細菌や真性細菌ではCRISPR RNAとよばれる低分子RNAがウイルスやファージのゲノムを標的にしていることが明らかになって来た.すなわち,低分子RNAには宿主の生体防御機構と大きく関わっているものがある.低分子RNAを使って,ウイルスやファージばかりでなく,病原性細菌などの増殖をコントロール出来る可能性についても考察する.