ウイルス
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総説
ゲノミクスの手法に基づくHCV感染者のIFN治療効果の研究
杉山 真也溝上 雅史
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2011 年 61 巻 1 号 p. 15-24

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抄録
 ヒトゲノムの解読が進められたことで,感染症領域でもホスト因子の大規模な解析が可能となった.その中で,C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療の効果を規定する因子の探索が行われ,IL-28B遺伝子周囲のSNPsが同定された.この結果は,人種を超えてその関連が認められ,治療感受性の遺伝子型であった場合,最大でオッズ比が約12倍を示し,ウイルス排除へと至ることが示された.さらに,このSNPsはHCVの自然治癒にも関連を示し,HCV感染とIL-28B遺伝子の間に相互作用が存在していることを示唆するものであった.また,この治療の副作用の一つである貧血の発症に関連するSNPsがITPA遺伝子周囲に同定された.貧血に対して抵抗性を示す遺伝子型を保有した場合,ヘモグロビンの減少が抑制された.ITPA周囲のSNPsでは,人種により強い関連を示すSNPsに違いが認められ,人種ごとに検討することの重要性が示された.これらのSNPsを診断に利用することで治療効果を予測することができ,効果的な薬剤選択が可能になると考えられる.
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© 2011 日本ウイルス学会
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