ウイルス
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総説
RNAウイルス感染に対する自然免疫
押海 裕之松本 美佐子瀬谷 司
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2011 年 61 巻 2 号 p. 153-162

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抄録
 ウイルス感染に対する自然免疫機構の解明はRIG-I様受容体やToll様受容体の発見により大きく進んだ.細胞質内に侵入したウイルス由来のRNAは主にRIG-I様受容体により認識される.この時,HMGB1-3分子群やDExD/H box型のRNAヘリケース分子群が,ウイルスRNAとRIG-Iの結合を仲介する.RIG-Iはウイルス由来のRNAを認識すると,アダプター分子のIPS-1を介してI型インターフェロンを含む炎症性サイトカインの産生を誘導する.このシグナルにはRipletやTRIM25等のユビキチンライゲースによりRIG-Iがユビキチン修飾を受けることが重要である.エンドソーム内のウイルスRNAはToll様受容体により認識され,TLR3が二重鎖RNAを認識し,TLR7や8が一本鎖RNAを認識する.ウイルスはこれらの過程を阻害する機構を持つ.C型肝炎のコア蛋白質はDExD/H box型RNAヘリケース分子の機能を阻害し,さらに,ウイルスのNS3-4A分子が宿主のIPS-1を切断しI型インターフェロンの産生を抑制する.ウイルス感染に対する自然免疫機構の解明が進むにつれ,今後,ウイルスによる宿主免疫の抑制機構の理解も大きく進むと期待される.
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© 2011 日本ウイルス学会
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