抄録
ATLの原因ウイルス探索研究からHTLV研究が始まり30年である.このウイルスのレトロウイルスとしての性状とTaxとRexを中心にウイルス遺伝子の制御系,細胞増殖の活性化ならびに細胞間ウイルス伝播様式,そのウイルスキャリアと関連疾患の存在などが,日本の研究者を中心にそれぞれ解明されてきた.そして,どのようにヒトに感染し,個体の中で増え,腫瘍細胞クローンが選択され,そして,どのような分子が介在して病気を起こすのか,未解明のことも数多くある.HTLVが見い出された当初,レトロウイルス研究には多くの知見の蓄積があったこと,そして,このウイルスはATLやHAMというきわめて特徴のある疾患に関わることから,これらの疾患の発病分子論はすぐに明らかにされると考えられていた.しかしながら,いずれの疾患の発症メカニズムに多くのなぞがあり,そして,根治療法もまだ開発されていない.このウイルス研究のはじまりから,振り返ってみる.