抄録
フィロウイルス(エボラウイルスおよびマールブルグウイルス)はヒトを含む霊長類に重篤な出血熱をひきおこす病原体として知られている.ワクチンおよび抗ウイルス薬は実用化されていない.近年,ウイルス増殖過程におけるフィロウイルス蛋白質の様々な機能およびウイルス蛋白質と宿主因子との相互作用が明らかになってきた.また,霊長類以外の動物のフィロウイルス感染およびヨーロッパにおける新種のフィロウイルス発見などの報告により,フィロウイルスの宿主域・生態に関する研究も新たな展開をみせている.本稿では,フィロウイルスに関する基礎的な知見と最近の話題を紹介する.