2014 年 64 巻 2 号 p. 213-224
レオウイルス科は2つの亜科に分かれ,15のウイルス属からできている非常に大きなウイルスのグループである.これらのうちファイトレオ属,オリザウイルス属およびフィジーウイルス属に含まれる14種のウイルスが植物に感染する.日本ではイネ萎縮ウイルスやイネ黒条萎縮ウイルスなど4種のウイルスの発生が報告されている.植物に感染するレオウイルスは,日本をはじめとする東南アジアのイネやトウモロコシなどのイネ科作物に突発的に大発生することがあり,東南アジアの食料の安定生産上の脅威となっている.ウイルスの粒子は二殻の正二十面体で,その直径は50~80nm,10から12 の分節された二本鎖のRNAを持つ.ウイルスは植物のみならずウンカやヨコバイなどの昆虫の細胞で増殖し,なかには親から子へと経卵伝染する種類もある.本稿では,研究が進んでいるイネ萎縮ウイルスの研究で得られた知見を中心に,植物に感染するレオウイルスの分類と起源,作物に及ぼす被害,ウイルスの基本構造と複製機構,昆虫および植物での細胞間移行について解説を行うとともに,遺伝子組換え技術を用いたウイルス防除に関する研究を紹介する.