これまでに報告されている菌類ウイルス(マイコウイルス)の多くは2本鎖RNA (dsRNA)をゲノムに持つ.これは,菌類では回収が比較的容易なウイルス由来dsRNAを指標にして探索が行われてきたことと無関係ではないであろう.現在では,様々な菌類,特に植物病原菌類を対象にスクリーニングが行われ,宿主菌に対し病原性を有する或いは宿主菌の病原力を衰退させるマイコウイルスの分離・同定が盛んに行われている.この背景には,植物病原糸状菌による農作物の病害をマイコウイルスで制する,いわゆるヴァイロコントロール(ウイルスによる生物防除)を目指す研究の世界的流れがある.病原性の有無に拘らず多くのRNAウイルスが分離され,多様性に満ちた菌類のdsRNAウイルスの世界が明らかになりつつある.2014年現在, dsRNAマイコウイルスを包含するウイルス科は,国際ウイルス分類委員会で6科(
Reoviridae, Totiviridae, Chrysoviridae, Partitiviridae, Megabirnaviridae, Quadriviridae)承認されている.加えて,未分類ウイルスのグループをすべて含めると,近い将来倍増する見通しである.本稿では,菌類から分離された多種多様なdsRNAウイルスを最近の知見を交えて概説する.
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