ウイルス
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特集:エボラ出血熱
エボラウイルス病流行における生物医学以外の要因
足立 拓也
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2015 年 65 巻 1 号 p. 83-88

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抄録

 2014年に西アフリカで報告されたエボラウイルス病は,過去最大の流行となった.医療従事者を含む多数の感染者と死者を出しながらも,関係者による多大な努力の結果,ようやく流行は終息に近づきつつある.
 本稿では5つの疑問を取り上げて,今回の流行の本質について考察する.
1.なぜエボラウイルス病が西アフリカに出現したのか?
2.なぜ流行がこれほどまでに拡大したのか?
3.なぜ医療従事者の感染が相次いだのか?
4.なぜ大規模な流行が鎮静化しつつあるのか?
5.日本でも同様の流行は起こり得るのか?
 エボラウイルス病は,病人の世話や葬儀といった人間的行為を介して伝播することから,その流行は自然に鎮静化するものではなく,人為的な努力によってはじめて終息に持ち込むことができる.患者,一般市民,国際社会といった関係者の誰の利益を尊重するかによっても,疾患対策の成否は大きく影響される.

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© 2015 日本ウイルス学会
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