2017 年 67 巻 1 号 p. 69-78
麻疹(はしか)を起こす麻疹ウイルスと流行性耳下腺炎(ムンプス・おたふくかぜ)を起こすムンプスウイルス,出血熱を起こす場合があるエボラ・マールブルグウイルスは,いずれもマイナス鎖一本鎖のRNAをゲノムとするエンベロープウイルス(モノネガウイルス)である.これらのウイルスがどの様なメカニズムで細胞へ侵入し,また,抗体により中和されるかは未解明なことが多い.我々は,ウイルス学的手法と構造生物学的手法を組み合わせることにより,その全容を解明すべく取り組んでいる.本稿では,上記ウイルスの糖蛋白質と受容体または抗体との相互作用を介した細胞侵入と中和に関する現在の知見を我々の研究成果を中心に概説する.