ウイルス
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アレナウイルスの基礎と抗ウイルス薬の現状
谷 英樹 浦田 秀造
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 68 巻 1 号 p. 51-62

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抄録

 アレナウイルスはアレナウイルス科に属するウイルスの総称で,ほぼヒトに病原性を示さないリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)から,ヒトに高い病原性を示すラッサウイルス,フニンウイルス,マチュポウイルス,チャパレウイルス,ルジョウイルス,サビアウイルス,グアナリトウイルスまで数多く存在する.上記のうちLCMV以外は,世界保健機関(WHO)の定めるリスクグループ4の病原体であり,これに基づき日本でも一種病原体に指定されている.日本ではこれまでにラッサ熱患者の一輸入例を除き,患者の発生は認められていないものの,2014-16年に起こった西アフリカ地域でのエボラウイルス病アウトブレイクのように,いつ我が国で輸入症例が発生しても不思議ではない状況にある.病状や重篤性を考えると,流行地域でのワクチンや治療薬の整備は喫緊の課題であり,流行地域以外の国においてもこれらを整備しておくことは重要である.しかしながら,高病原性アレナウイルス感染症に対する基礎研究や治療薬の開発は,病原体の性質上,高度安全研究施設での取り扱いが必須となり,なかなか進んでいない.本稿では,最近のアレナウイルス全般の基礎研究と抗ウイルス薬の開発状況について概説する.

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© 2018 日本ウイルス学会
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