抄録
医療関連施設において,COVID-19を含む新興・再興感染症の初期対応は組織的な管理が必要である.チェックリストによるトリアージおよび臨床的評価を併用した,受診患者の初期リスク評価とその後の対応フロー構築が第一歩となる.スクリーニング検査は,初期評価で低リスクと判断された無症候患者の早期診断を目的に実施される.しかし,検査結果に関わらず,入院時の初期評価および入院後の症状経過観察や感染対策が不十分にならないよう留意する.基本は標準予防策であり,特に手指衛生の遵守を重視する.無症候性・発症前患者からの伝播,飛沫の放出と吸入減少を目的としたユニバーサルマスキングが,新たな基本予防策となっている.COVID-19の疑い・確定患者対応は,サージカルマスクまたはN95マスク,手袋,ガウン,眼の防護,キャップ着用を基本とし,各施設の医療環境を踏まえて判断する.陰圧環境は常に必要なものではないが,高リスク環境において可能であれば検討する.標準的な医療提供体制における環境表面からの伝播リスクは限定されている一方,換気の重要性を踏まえた施設環境の継続した見直しが期待される.