ウイルス
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総説
Epstein-Barrウイルスと多発性硬化症
佐藤 好隆
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2023 年 73 巻 2 号 p. 147-152

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抄録
 Epstein-Barrウイルス(Epstein-Barr virus; EBV)は,γヘルペスウイルス亜科に属するDNAウイルスで,バーキットリンパ腫などの腫瘍の原因となる.成人における抗体陽性率は90%を越え,最も浸淫しているヒトの病原体の一つである.EBVは自己免疫疾患との関連が以前から指摘されていたが,2022年に多発性硬化症 (multiple sclerosis) のトリガーとなるという疫学的および分子メカニズムに関するエビデンスが立て続けに報告され,ポストコロナにおけるワクチンターゲットとして注目を集めている.多発性硬化症は中枢神経の軸索を覆っている髄鞘に炎症が起き,変性し,中枢神経の機能が損なわれる疾患で,世界で最も患者数の多い慢性炎症性の神経変性疾患である.本稿では,EBVが多発性硬化症の発症にどのように関与するかを中心に紹介する.
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