ウイルス
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2023年度杉浦奨励賞論文
マイナス鎖RNAウイルスのゲノム複製基盤に関する研究
松本 祐介
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2024 年 74 巻 1 号 p. 67-76

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抄録
 マイナス鎖RNAウイルスは多くの重要な病原体を含むグループであり,各ウイルスのゲノム複製基盤には共通点が多い.ウイルスたちは多機能なRNA依存性RNAポリメラーゼを持ち,核蛋白質に覆われたマイナス鎖RNAを鋳型にmRNA転写・ゲノム複製を行う.著者らは,ウイルスグループごとの共通点・相違点を明らかにすることで総論的にこれらのウイルスを理解することを目指している.モノネガウイルス目のパラミクソウイルス科はゲノムの塩基数が6の倍数で無ければ増殖できないRule of Sixの法則に従う.著者らは遺伝子操作系によってRule of Sixに従わないパラミクソウイルスの人工合成に成功し,これを用いたRule of Six存在意義の解明に挑んだ.また,ブニヤウイルス目のゲノム複製開始に重要なゲノム末端のプロモーター構造の機能解析を行い,クリミア・コンゴ出血熱ウイルスを含むナイロウイルス科において,他の分節型RNAウイルスとは異なるユニークなRNA合成の特徴を明らかにした.さらにボルナウイルスの核内で持続感染を成立させるというRNAウイルスとしては例外的な性質の解明を行った.
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