抄録
1996年に中国広東省で出現したH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスは, 家禽へのワクチン接種による不顕性感染の常態化や, またそもそも不顕性感染が起きやすいアヒルへの感受性が上がってきたことによって, 現在では様々な種の野鳥の間で群として持続的な感染が確認されている. ウイルスは鳥の渡りとともに広範囲に拡散し, 今やH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの脅威は世界規模のものとなっている. さらに2020年以降は野生哺乳動物における感染も目立つようになってきた.野鳥における群としての持続的な感染は不可逆的な状況と考えられ, 状況をこれ以上悪化させないためにも, 環境中のウイルス量の低減は喫緊の課題である. 本稿では野鳥と野生哺乳動物におけるインフルエンザウイルス感染症の歴史と現状を振り返りつつ, 本ウイルスによる被害を食い止めるために今後求められる研究, 対策について議論したい.