ウイルス
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特集1:H5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの最新動向
牛由来H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの病原性と感染伝播性
前村 忠河岡 義裕
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2024 年 74 巻 2 号 p. 117-130

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抄録
 クレード2.3.4.4bのH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスは,2020年から2021年にかけてヨーロッパに出現後,渡り鳥によって世界各地に急速に拡大し,家禽,野鳥,および野生動物においてアウトブレイクを引き起こしてきた.感染動物との濃厚接触が原因と考えられるヒトの感染例も散発的に報告されている.2024年初頭から米国テキサス州の農場の乳牛において,摂食不良,乳質の変化および乳生産量の低下などの臨床症状が認められ,同年3月にH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスが原因であることが報告された.2024年12月現在,米国の15州の乳牛で本ウイルスの感染例が報告されている.牛への感染が確認された農場周辺の猫,さらに感染した牛や,牛から伝播した感染鶏との接触を介してと考えられるヒトへの感染例も報告されており,ヒトでのH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染拡大が懸念されている.最近の研究結果から,牛またはヒトから分離されたH5N1高病原鳥インフルエンザウイルスは,マウスおよびフェレットに強い病原性を有しており,フェレット間で飛沫を介して伝播することが明らかとなった.これまでにない規模でH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスの哺乳動物での感染拡大が続いており,ヒト‐ヒト間で効率よく飛沫伝播を起こすウイルスが偶発的に発生する可能性があるため,世界規模での感染状況のモニタリングが重要である.
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