抄録
一部の植物ウイルスは花粉に乗り新たな植物へと伝染するが,1918年に植物ウイルスの花粉伝染が報告されて以来,その伝染メカニズムは長らく不明のままであった.花粉伝染は「花粉による垂直伝染」と「花粉による水平伝染」に分類されるが,近年,著者らの解析により,その伝染メカニズムが徐々に明らかになってきた.花粉による垂直伝染では,ウイルス感染花粉から発芽した花粉管が,受精のために精細胞を胚のうに運ぶ際,同時にウイルスを持ち込み,その結果としてウイルス感染種子が形成されると示唆された.一方,花粉による水平伝染では,ウイルスを蓄積した花粉管が柱頭に侵入・伸長する過程で,柱頭にウイルス感染点を形成し,そこから柱頭や花柱の維管束へ感染が拡大,さらに篩管を介して植物体全体に感染が広がると示唆された.この様に,花粉伝染性ウイルスは,花粉に乗り,種子植物の有性生殖を巧みに利用して,水平および垂直にウイルスの伝染を成立させていると考えられた.本総説では,著者らがこれまで行ってきた花粉伝染に関する解析を概説する.