抄録
チンパンジーとヒト幼児を対象として、対面場面で積木の配置課題をおこなった。チンパンジーは積木をつむことができるものの、積木を横一列に並べたり、二次元以上の構造をもつ形を構成したりするのは苦手であることがわかっている。そのため、チンパンジーでも二次元平面上への配置が可能なように、3×3の9個の升目にしきられた箱に積木を配置する課題を考案した。1つの升目に1個の積木を入れるという1対1対応の訓練をおこなったのち、色や形のことなる積木を提示して箱の中に自由に配置してもらった。その結果、チンパンジーは、積木を色や形によってまとめて3個ずつ提示するという手がかりが付与されている条件で、分類的な配置をおこなうことがあった。しかし、手がかりが与えられず9個の積木が同時に提示される条件では、ほとんど分類的な配置をおこなわなかった。ヒト幼児では、3-4歳で手がかりがない同時提示の条件でも、自発的に分類をして配置する行動が多く見られた。4歳半以降になると、行と列の双方が均等になるような配置を工夫する行動が見られるようになった。色と形のどちらが分類の手がかりとして使われやすいかを見ると、低年齢のヒト幼児では形のほうがより使われやすかったが、チンパンジーや高年齢のヒト幼児では使われ方に大きな差はなかった。配置のパターンを作るときに、どのような順序で積木を入れていくのかを分析すると、ヒトでは一定の規則性をもって積木を順番に入れる行動が見られたものの、チンパンジーでははっきりとした規則性は確認できなかった。色や形によって分類的に配置する行動の萌芽がチンパンジーでも確認された。チンパンジーが二次元平面への積木配置になんらかの自発的なルールをもっていたことは興味深く、今後さらに広く複雑な平面上での配置課題を通して萌芽的芸術へのつながりや、三次元空間の認識などについて研究を展開していきたい。