抄録
7歳齢の雄猫が突然の後躯麻痺を主訴に来院した。身体検査では開口呼吸,後肢の冷感,股動脈拍動の消失がみられた。心エコー図検査では左心室壁の肥厚,左心室内腔の狭小化,左房の拡大が確認された。血液生化学検査ではAST, ALT, LDH, CPKの上昇がみられ,血漿ANP濃度は95.5 pg/mlと上昇していた。本症例では3日間の集中治療を行ったところ臨床兆候の改善がみられたため退院し,内科治療を継続した。第28病日には臨床兆候ならびに心エコー図検査所見の改善が確認された。血液生化学検査ではAST, ALT, LDH, CPKの低下がみられ,血漿ANP濃度は38.8 pg/mlに減少していた。これらのことから継続的な血漿ANP濃度の測定は肥大型心筋症猫において治療効果の指標となる可能性が期待される。