抄録
失神を呈する4歳齢のボーダーコリーが来院した。パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度の低下を認め,心臓超音波検査により肺動脈弁狭窄症および両方向性短絡の筋性部心室中隔欠損症と診断された。肺動脈流速は5.3 m/secを示し,右室の求心性肥大および収縮期の右-左短絡血流を認めたことから,肺動脈弁狭窄による右心負荷は重度であると判断し,体外循環下にて肺動脈弁矯正術を実施した。術後,肺動脈流速は依然高値を示したものの,失神の消失,動脈血酸素飽和度の改善,収縮期における左-右短絡血流を認めたことから,本症例に対する肺動脈弁矯正術は有効であったと考えられた。また,術後のQp/Qsが1.35を示していたことから,術後の肺動脈における高速血流の要因として心室中隔欠損孔を通過する短絡血流の増加が考えられた。