動物の循環器
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44 巻, 1 号
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総説
  • 堀 泰智
    2011 年 44 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    近年,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)やB-タイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)などの心臓バイオマーカーに関する基礎的および臨床的研究成果が蓄積され,心臓バイオマーカーを応用した診療が広く普及しつつある。本総説では,基礎的および臨床的研究データを交えながら心臓バイオマーカーの生理的分泌および代謝機構,測定値の臨床的解釈,測定時の注意点などについて解説したい。ヒトをはじめイヌおよびネコの慢性心疾患患者では,血中ANPやBNP, NT-proBNP濃度が重症度に関連して上昇している。これら心臓バイオマーカーは慢性心不全犬の診断や予後予測に有用であると考えられるが,ANPとBNPの臨床的意義は異なっている。ANPは主に心房筋の伸展刺激によって即座に血中へ分泌され,BNPは主に心室筋の伸展刺激によって血中に放出される。また,ANPは心房が伸展刺激を受けた直後から血中濃度に反映されるが,BNPは心室筋が伸展刺激を受けた後から血中濃度に反映されるまでにタイムラグが存在する。これらのことから筆者は,ANPは急性および慢性のうっ血マーカーとして,NT-proBNPは心室筋の負荷や障害のマーカーとして使い分けている。しかし,心臓バイオマーカーの測定値のみで病態を判断することは危険であり,一般身体検査や胸部X線検査,心エコー図検査などと組み合わせた評価が必要である。
症例報告
  • 中村 隆, 上地 正実, 水野 祐, 内田 周平, 粕谷 新音, 原田 佳代子, 河野 正太, 篠田 麻子, 遠藤 征明, 沢田 保, 水野 ...
    2011 年 44 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    失神を呈する4歳齢のボーダーコリーが来院した。パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度の低下を認め,心臓超音波検査により肺動脈弁狭窄症および両方向性短絡の筋性部心室中隔欠損症と診断された。肺動脈流速は5.3 m/secを示し,右室の求心性肥大および収縮期の右-左短絡血流を認めたことから,肺動脈弁狭窄による右心負荷は重度であると判断し,体外循環下にて肺動脈弁矯正術を実施した。術後,肺動脈流速は依然高値を示したものの,失神の消失,動脈血酸素飽和度の改善,収縮期における左-右短絡血流を認めたことから,本症例に対する肺動脈弁矯正術は有効であったと考えられた。また,術後のQp/Qsが1.35を示していたことから,術後の肺動脈における高速血流の要因として心室中隔欠損孔を通過する短絡血流の増加が考えられた。
臨床ノート
  • 粕谷 新音, 上地 正実, 山野 茂樹, 水野 壮司, 水野 佑
    2011 年 44 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/08
    ジャーナル フリー
    猫における犬糸状虫症は特異的な臨床徴候に乏しく,診断が難しい。そのため,実際には報告されている罹患率よりも多い可能性がある。原因不明の間欠的嘔吐,呼吸困難および神経徴候を呈する猫については,犬糸状虫症の可能性も視野に入れ,複数の異なる検査を繰り返し行い,注意深く診断する必要がある。今回われわれは,犬糸状虫に感染した猫に対し,右心房の巾着縫合切開部からのアプローチによって摘出手術を行い,良好な結果を得たため,その概要を報告する。
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