2カ月齢のシーズーを左前大静脈遺残(PLCVC)および右前大静脈欠損を伴う肺動脈狭窄症(PS)と診断した。肺動脈バルーン弁形成術(PBV)を計画したが,右前大静脈欠損を伴うPLCVCでは頚静脈からの右心カテーテルが困難であるため,大腿静脈からカテーテル挿入が可能な体格になるまで経過観察とした。6カ月齢,体重4.6 kgの時点で腹水貯留が認められ,大腿静脈からのPBVを実施した。右室流出路へのカテーテル誘導が困難であったが,血管造影用カテーテル内へマイクロカテーテルを挿入する方法により,狭窄部の通過が可能となった。大腿静脈へ挿入した4 Frのシースへも挿入可能な小児用弁形成バルーンカテーテルを使用し,術後肺動脈血流速および臨床症状の改善が認められた。本手技は大腿静脈からのPBVにおいて有用であると考えられるが,使用したバルーン径が比較的小さいため,今後も再狭窄の有無を評価する必要がある。