動物の循環器
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症例報告
パラシュート様僧帽弁を疑う所見が得られた僧帽弁狭窄症の猫の一例
荒木 隆次 岩永 孝治井坂 光宏
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2022 年 55 巻 1 号 p. 29-34

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抄録

症例は雄,体重3.2 kg, 5ヶ月齢の雑種猫であり,心雑音の精査を目的に来院した。心臓超音波検査において,拡張期に左心房から左心室へと流れるモザイク血流,僧帽弁の開放制限及び前尖のドーミング所見,後乳頭筋の低形成,左房拡大が認められた。以上より我々は本症例を僧帽弁狭窄症と臨床診断した。またとくに後乳頭筋において低形成所見を認めたことから,僧帽弁狭窄症の原因としてパラシュート様僧帽弁による僧帽弁装置の異常を疑った。臨床徴候は認められず,飼い主の希望により無治療による経過観察を続けた。その後第883病日まで経過を追っているが心臓超音波検査における変化は認められず,臨床徴候も認められなかった。猫において,パラシュート様僧帽弁に類似した所見が得られた僧帽弁狭窄症の症例報告は初であり,人では予後不良の病態であるため,本症例は今後も注意して経過をみていく必要がある。

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© 2022 日本獣医循環器学会
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