2022 年 55 巻 2 号 p. 105-110
心筋型拘束型心筋症と臨床診断した猫の経過において,急性の呼吸促迫および胸水貯留が認められた。検査の結果,完全房室ブロックを併発していたことが判明した。死後の病理検査では,心内膜下心筋層の線維化病変や房室接合部中心線維体の硬化性病変が認められた。心筋型拘束型心筋症の症例が完全房室ブロックを併発し,徐脈となったことで血行動態がより悪化し,うっ血が助長された可能性が考えられた。本症例の経験を通じ,心筋型拘束型心筋症罹患猫では,房室接合部の硬化性病変の進行により,完全房室ブロックを発症する可能性があり,それにより病態が急性に増悪し得ることを認識しておく必要があると考えられた。