2022 年 55 巻 2 号 p. 99-103
症例は日中の隣家の解体工事による騒音などのストレス暴露後に,虚脱及びNT-Pro-BNPの高値を認めたため本学を紹介受診した。来院時の聴診による心拍数は100回/分であったが,心電図検査中の心拍数は60回/分と徐脈を示した。心電図検査にて2種類の互いに独立したP波を認め,異所性を疑うP波は心室に伝導されること無く基本調律にも干渉しなかった。上記の特徴的な心電図所見より心房解離と診断した。徐脈の精査を目的にアトロピン負荷試験を実施したところ,15分後心拍数の上昇とともに心房解離は消失した。
犬における過去の同様の報告でも徐脈の際にのみ心房解離を認めていること,アトロピン負荷試験により心房解離が消失したことから,何らかの迷走神経緊張が心房解離を引き起こしていることが示唆された。