動物の循環器
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症例報告
経時的な腎静脈波形解析が肺高血圧症の治療効果判定に有用であった犬の1例
森田 智也 照喜名 弘樹鈴木 仁史
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2022 年 55 巻 2 号 p. 89-97

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抄録

シーズー,10歳齢,去勢雄が3か月ほど前からの発咳,1か月前からの食欲不振・軟便・腹囲膨満を主訴に来院した。重度の右心室・右心房拡大,心室中隔の扁平化,肺動脈拡大,重度三尖弁逆流および腹水貯留が認められ,肺高血圧症に起因した右心不全と診断した。パルスドプラ法による腎静脈波形解析を実施したところ,拡張期において血流が途絶える不連続性パターンが認められた。治療としてクエン酸シルデナフィルを投与したところ,第202病日には臨床症状の部分的な改善が認められた。右心房の縮小,三尖弁逆流の重症度の低下,最大速度の低下が認められた。腎静脈波形解析では波形が連続性パターンに変化していたが,静脈のコンプライアンスを反映する静脈インピーダンス指数は基準範囲を超えていた。さらなる状態の改善を目的としてピモベンダンの投与を行ったところ,第230病日には臨床症状の劇的な改善が認められた。さらなる右心房の縮小が認められたが,三尖弁逆流最大速度は上昇していた。腎静脈波形解析では連続性パターンが保たれており,さらに静脈インピーダンス指数が基準範囲内に改善していた。本症例において肺高血圧症の臨床症状が改善するにしたがって腎静脈波形の変化が認められたことから,肺高血圧症の治療効果判定に有用な客観的な指標である可能性が考えられた。

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© 2022 日本獣医循環器学会
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