2023 年 56 巻 1 号 p. 19-23
避妊手術を目的として来院した3歳齢の柴犬に手術前の検査を行ったところ,血液検査にて軽度の貧血と,心臓超音波検査にて,中等度から重度の大動脈弁閉鎖不全症と軽度の僧帽弁閉鎖不全症が認められた。僧帽弁に明らかな粘液腫様変性はなく,左室拡大に伴う二次性僧帽弁閉鎖不全症が疑われた。手術は中止とし,臨床症状を呈していなかったため,内科治療は行わずに経過観察とした。今回,小動物領域では稀な中等度から重度の大動脈弁閉鎖不全症により二次性僧帽弁閉鎖不全症を引き起こしたと思われる症例に遭遇したので報告する。