抄録
本実験において我々は4系統のラット(SHR, WKY, Wistar, F344)と1品種のウサギ(JW)を用いて,血圧測定用テレメトリー送信機埋め込み手術後2あるいは3週間にわたって体重,平均血圧および心拍数を測定し,それらの測定値に及ぼす手術の影響と回復性を調べた。
WistarおよびF344の腹腔内に送信機を埋め込んだ場合,いずれも術後2~3日までは体重が減少したが,その後回復し,術後3週目には無処置対照群と同等になった。Wistarの腹腔内あるいは背部皮下に送信機を埋め込み,術後の体重変化を比較した結果,背部皮下に送信機を埋め込んだ場合の方が腹腔内埋め込みに比べて手術直後の体重減少が少なく,回復も早かった。また,SHR, WKYおよびJWにおけるテレメトリー送信機埋め込み手術2週後の体重は,手術時の体重以上あるいはそれとほぼ同等の数値を示し,これらの動物においても体重の回復性が確認された。
ラットでは腹腔内,ウサギでは側腹部皮下に送信機を埋め込んだ場合,いずれも手術の翌日には平均血圧および心拍数の高値がみられたが,術後1週以降は明暗期平均値が安定した。また,術後1週間における平均血圧および心拍数の日内変動はラットおよびウサギのいずれにおいても乱れていたが,術後2週間目にはWKYの平均血圧を除くすべての項目で暗期に高値を示す夜行性動物特有の日内変動を明確に確認することができた。
したがって,テレメトリー送信機埋め込み手術の後,体重の点ではラットで3週間以上,ウサギで2週間以上,血圧および心拍数の点ではラット,ウサギともに,1週間以上の術後回復期間を設定することにより,実験に供することが可能であると結論する。