抄録
犬糸状虫寄生のみられた野生タヌキ5頭の肺動脈について病理学的検索を行なった。主要な血管変化は肺動脈幹および左右肺動脈にみられた絨毛状の内膜増生であった。このような血管病変は全肺葉に分布する弾性型の肺内肺動脈にもみられたが,とくに右後葉に多発していた。一方,筋型の肺内肺動脈においては絨毛状内膜増生を伴わない線維性・細胞性の内膜肥厚および中膜肥厚が観察された。これら犬糸状虫寄生のみられた野生タヌキにおける肺動脈病変は犬糸状虫寄生犬にみられる肺動脈病変と質的には一致していたが,量的にはイヌのそれに比べてより重度であった。