動物の循環器
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麻酔ウサギにおける上気道の水応答性呼吸循環反射
鵜澤 巨樹矢用 健一局 博一菅野 茂
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1995 年 28 巻 1 号 p. 27-43

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抄録
1.成熟ウサギにおいても,鼻腔内への蒸留水刺激(38℃)によって,無呼吸,徐脈,末梢動脈圧の上昇,左室内圧の一過性上昇とそれに引き続く低下によって代表される著明な呼吸循環反射が誘発されることが明らかになった。この反射は生理的食塩水(38℃)の作用では不明瞭であった。
2.上述の反射は両側の上喉頭神経および舌咽神経を切断した動物でも生じたことから,反射の刺激部位は主に鼻腔内にあり,また求心路として三叉神経が関与することが示唆された。
3.蒸留水のかわりに等張グルコース溶液(6%)を鼻腔内に作用させたときには,生理食塩水の場合と同様に明瞭な呼吸循環反射を誘発することができなかった。このことから,水溶液の浸透圧差が反射を誘発する直接の原因であることが示唆された。
4.12℃の生理食塩水を鼻腔に作用させると弱いながらも類似した呼吸循環反射が出現したことから,水の温度も刺激の一因になることが示唆された。
5.人工呼吸下で呼気位において呼吸を一過性に停止させると,心拍数の減少,末梢動脈圧,左室内圧および左室内圧微分波の低下が観察された。一方,人工呼吸下で呼吸を維持しながら鼻腔内に蒸留水を作用させると,軽度の心拍数の減少,末梢動脈圧,左室内圧の軽微な上昇および左室内圧微分波の軽微な低下が観察された。これらの成績から,自発呼吸下の蒸留水刺激で認められる著しい心拍数減少は呼吸抑制に起因する二次的な抑制効果と呼吸に依存しない一次的な抑制効果が重なり合って発現するものと考えられる。
6.無呼吸の発現性は,自律神経遮断薬の投与によっては影響を受けなかったが,心拍数の減少はアトロピンで,末梢動脈圧の上昇はフェントラミンで,左室内圧微分波の初期の上昇はプロプラノロールの投与によって明瞭に抑制された。これらの成績から,心臓に対しては副交感神経と交感神経の両方の緊張が同時に作用するが,副交感神経の緊張が優位に作用することが示唆された。また,末梢動脈圧の上昇は交感神経の緊張を介してなされることが明らかになった。
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