抄録
「障害者の加齢に伴う職業能力の変化と対策に関する実証的研究」の一環として、全国7, 073事業所の35歳以上の雇用障害者 (有効回答13, 933名) を対象に郵送法による実態調査を実施した。本研究では、雇用知的障害者の「普通に働ける年齢」の認識が低くなっている規定要因を検討した。知的障害では、「普通に働ける年齢」が平均54.9歳と身体障害よりも4歳程度低く、記入者別では本人が記入した場合が最も高くなった。「普通に働ける年齢」の予測について、有効な重回帰モデルを構成できたのは記入者が家族の場合のみで、規定要因としては、職務要件に係る「知的要件」や「作業環境」、本人の主観や満足度に係る「老化の自覚」、「就労環境が悪い」、「仕事の量が足りない」といった特性と環境の相互作用面に関する要因が多く抽出され、雇用管理ではこれらの要因に留意した配慮や不満への対応の必要性が示唆された。