抄録
神奈川県総合リハビリテーションセンター職業前指導科を利用した脳外傷者67人を対象に, 障害状況や訓練予後などについて, 基礎的な動向を調査した。対象者のほとんどは身体機能的に大きな問題はなかったが, 約3割が失語症, 約6割が記憶障害を有し, また約6割が注意, 意欲, 見当識など何らかの高次脳機能障害の存在を指摘されていた。訓練予後については, 約2割が一般就労につながり, 約1割が福祉的就労, 家庭復帰が約4割と最も多かった。就労した者の中には, 記憶障害を伴ったり, 知能検査の結果が比較的低い人が多く含まれていた。完全に元の仕事に復帰できた者は4人で, その他は配置転換, 勤務時間の調整など, 環境や職務および労働条件の調整がなされていた。脳外傷者の職業的復帰には, 本人の障害状況に加えて, 事業所の受入れ姿勢などの社会的要因が大きく影響していることが示唆された。それらの結論をもとに, 脳外傷者に対する職業前訓練の今後の課題を考察した。