抄録
個人の日常生活能力を適切に把握することを通して基本的職業能力が把握出来るのではないかとの仮説を検証すべく, 60項目からなる日常生活能力チェックリストを作成し, 身体および精神に障害を有する者を対象に検証した。その結果, (1) 試作した日常生活能力チェックリストは, 障害者の職業能力評価法としても有効であること。(2) 自己評価であり, 特に本評価の対象とした中高年者の心理的抵抗や負担も少なく, 評価を通して自己の職業能力や老化の程度が分かること。(3) 評価項目は, 障害の特性を比較的正確に反映し, なおかつ障害による制限に影響されなかったこと。(4) 他者評価も有効であること, 等が明らかとなった。より一般的な万人に共通する日常生活能力質問項目を厳選し評価することを通して, 個人の基本職業能力の把握や老化の予後予測が可能となる見通しがついた。