2006 年 15 巻 3 号 p. 379-382
症例は39歳男性. 先天的凝固異常を認めず, 外傷などの後天的要因もなく深部静脈血栓症, 肺塞栓症を発症した. 前医においては本症例に対して, 腎静脈下部にGreenfieldフィルターを留置し, ヘパリンを用いた抗凝固療法を行ったにもかかわらず肺塞栓症を繰り返した. 当科紹介後, 新たにSimon nitinorフィルターを腎静脈上部に追加留置し, 抗血小板剤, ワーファリン等の内服によりINR (international normalized ratio) を2.5~3にコントロールすることで, 新たな肺塞栓症の出現をみることなくヘパリン投与を中止することができた. 退院後も外来通院としているが, 現在胸痛等の症状は認めない. 今後は凝固系遺伝子異常を含めたさらなる原因検索をする必要があると思われた.