大動脈病変を動脈の内側から被覆し閉鎖するステントグラフト治療では,病変の中枢と末梢にステントグラフトが密着する領域(ランディングゾーン)を確保する必要がある.胸部下行大動脈瘤は,血流を温存すべき弓部や腹部の主要分枝から離れているためランディングゾーンを確保しやすく,胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)の良い適応と思われるが,実際は多くの課題がある.さまざまな形態を呈するランディングゾーンと留置範囲を評価し,最適なデバイスを緻密な配慮を持って留置することが,技術的成功を収め長期の臨床的成功を維持する鍵である.本稿では下行大動脈特有の形態に対するデバイス選択の要点や技術的な注意点を共有する.またこの領域のTEVARに関連する大動脈食道瘻や虚血性脊髄障害などの重症合併症についても要点を纏めた.
【目的】透析患者の症候性・再発性中心静脈病変に対するDrug-coated balloons(DCB)の効果を検討する.【方法】2021年6月–2025年9月までに,中心静脈病変(ステント内狭窄・閉塞病変含む)に対してDCBを初回使用した27例を対象とし,DCBの効果を検証する.【結果】DCB初回使用前後の標的病変開存率は6カ月で30% vs 77%と有意にDCB使用後で改善していた.DCB繰り返し使用の効果は初回vs 2回目で有意差はなかった.サブグループ解析では,前拡張にPeripheral cutting balloon(PCB)を使用した群がPCB非使用群よりも有意差はないものの開存率が良好な傾向にあった.【結論】再発性中心静脈病変に対してDCBの初回使用効果は良好で,2回目の使用でも同様の開存率が得られた.前拡張にPCBを使用すると開存率が良好な傾向が認められた.
小児ポリオによる右下肢の発育不全に対し,小児期に施行された右浅大腿動静脈血管吻合術が原因と考えられる64歳の心不全症例を経験した.術前心エコー検査で右心負荷と肺高血圧を認め,血管造影で右浅大腿動脈から大腿静脈へのシャント血流および下大静脈の拡張を認めた.動静脈瘻が心不全に寄与している可能性が考えられたため,ステントグラフトを使用した血管内治療を施行した.術後はシャント血流の低下,右心負荷所見の改善を認め,術後5日目に自宅退院となった.本症例では小児ポリオに対する右浅大腿動静脈血管吻合術が心不全の発症に関与した可能性が高く,文献的考察を加え報告する.
症例は47歳男性.歯科治療の1カ月後から発熱,意識障害を認め,当院紹介となった.僧帽弁位に疣腫を認め,血液培養にてメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が陽性であり,感染性心内膜炎(IE)と診断された.抗生剤による内科的治療で小康状態を得たが,第28病日に僧帽弁逆流の増悪を認めた.第33病日にIEによる僧帽弁閉鎖不全に対して,生体弁による僧帽弁置換術を施行した.術後も高熱が続き,MRIにて化膿性椎間板炎を認め,CTでは脾動脈瘤(径30 mm)を認めた.臨床経過からは感染性脾動脈瘤の可能性が高いと考えられ,第69病日に開腹脾臓合併切除を施行した.術後も抗生剤治療を継続し,第106病日に抗生剤を終了した.IEに合併した感染性脾動脈瘤は稀であり報告は少ない.敗血症性塞栓症による脾梗塞や脾膿瘍形成後に血管が脆弱化することが原因と考えられている.感染性脾動脈瘤の特徴,治療法に関して文献的考察を加えて報告する.