日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
最新号
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総説
  • 山岡 輝年
    2024 年 33 巻 4 号 p. 191-194
    発行日: 2024/07/12
    公開日: 2024/07/12
    ジャーナル オープンアクセス

    大腿膝窩動脈領域に対する血管内治療(EVT)は,デバイスの進歩と手技の確立によって実臨床において広く受け入れられている.患者背景や病変解剖に応じて適切なファイナライズデバイスを選択することは,中長期の治療成績を決定する重要なファクターであるが,現状,画一的な選択基準はない.本稿では本邦において使用可能な大腿膝窩動脈領域EVTの主要ファイナライズデバイスの本邦における臨床成績を概説し,各デバイス(ステントグラフト,薬剤溶出性ステント,薬剤コーティングバルーン,編み込み型ナイチノールステント)の利点欠点について示す.

症例
  • 小林 由幸, 角田 翔, 小島 貴弘, 橋山 直樹, 輕部 義久, 齋藤 綾
    2024 年 33 巻 4 号 p. 179-183
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル オープンアクセス

    橈骨動脈にsuperficial radial arteryと呼ばれる走行異常がある場合,前腕部の橈側皮静脈と近接していることがあるが,薬剤によっては誤って動脈注射すると壊死をきたすものもあるため注意が必要である.症例は81歳,女性.近医で上部消化管内視鏡検査を行った際,左手関節付近にジアゼパムが注射された.直後より手関節から第一~三指の腫脹・疼痛・冷感が出現.第7病日,精査加療目的に当院紹介となった.エコーおよび造影CT画像で,橈骨動脈は解剖学的かぎたばこ入れより表層を走行しており,superficial radial arteryであることが確認された.橈側皮静脈と誤認されジアゼパムが動脈注射されたことにより,血流障害をきたしていると判断.連日プロスタグランジン製剤を点滴静注したが,第18病日に潰瘍化が懸念されたため高気圧酸素治療を開始.1カ月後には上皮化が得られ,後遺症はなかった.

  • 森 久弥, 髙木 寿人
    2024 年 33 巻 4 号 p. 185-190
    発行日: 2024/07/12
    公開日: 2024/07/12
    ジャーナル オープンアクセス

    われわれは,多発性単純性肝囊胞と多発性単純性腎囊胞両方に偽腔開存型Stanford A型急性大動脈解離(上行大動脈にtearを認めず,SVS/STS分類でB(0, 11))を合併したまれな症例を経験した.解離発症時に脳梗塞も併発していて体外循環は禁忌と考え,遠位弓部大動脈の一次エントリーを閉鎖するために,胸部ステントグラフト内挿入術を行った.当科で2022年1月から2023年12月までの2年間に,Stanford A型急性大動脈解離に対して手術を行った45例の中で常染色体優性多発性囊胞腎合併例はなく,単純性腎囊胞合併は14例(31.1%)・単純性肝囊胞合併は11例(24.4%)・少なくともどちらかの合併は20例(44.4%)・両方の合併は5例(11.1%)・多発性単純性肝囊胞と多発性単純性腎囊胞両方の合併は1例(2.2%)であった.単純性肝囊胞・単純性腎囊胞・大動脈解離の共通した病因としてマトリックスメタロプロテアーゼの関与が示唆されているが,今後のさらなる研究が待たれる.

  • 中村 優飛, 森 久弥, 波里 陽介, 内藤 敬嗣, 髙木 寿人
    2024 年 33 巻 4 号 p. 195-198
    発行日: 2024/07/19
    公開日: 2024/07/19
    ジャーナル オープンアクセス

    腎動脈瘤に対する血管内治療の成績は良好とされている.健康な34歳男性の左腎動脈前枝に生じた巨大囊状瘤(25 mm×30 mm×30 mm)は,neckが11 mm・neck-to-dome ratioが2.3と広基型であった.コイル塞栓には不向きとされる形状で,カバードステントを用いると,ほかの分節動脈を閉塞させてしてしまうと考えられた.冠動脈治療用ステント(Xience Skypoint)を標的血管へ留置し,瘤のneckをカバーしたのち瘤内にコイルを充填した.このような手技を用いることにより,本来コイル塞栓に不向きな形状の瘤に対しても,十分なコイルの充填が行えると考えられた.患者は合併症なく術後2日目に退院した.一方,はじめは瘤の中枢・末梢に4 mmのランディングゾーンを取れるステントを選択したが,瘤内へ脱落してしまい,十分に長いステントを追加留置した.腎動脈瘤に対する血管内治療は短期的な成績が確立されつつあり,デバイス選択についてのknow howや中~長期的な治療成績の蓄積が望まれる.

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