日本血管外科学会雑誌
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最新号
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講座
  • 瀬戸 達一郎
    2026 年35 巻3 号 p. 113-117
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    弓部大動脈瘤に対する手術成績は近年安定しており,その背景には適切なアプローチ選択,open stent graft(FET)の活用,人工心肺確立の工夫,脳保護の向上がある.アプローチは標準的な胸骨正中切開に加え,病変の末梢進展に応じて前側方切開やanterolateral thoracotomy with partial sternotomy(ALPS)など多様な選択肢がある.FETは広範病変を一期的に治療可能だが,真性瘤で脊髄障害のリスクが高く,留置位置には注意が必要である.人工心肺を確立する際は,粥腫による塞栓症を回避する工夫が求められ,isolated cerebral perfusionなどのテクニックも報告されている.脳保護は選択的順行性脳灌流が主流となり,温度管理を含めて安全性が確立している.本稿では,弓部大動脈瘤に対する弓部置換術の治療戦略について解説する.

症例
  • 平井 康隆, 辻 庸宏, 大村 篤史, 鈴木 晴郎, 畑田 充俊
    2026 年35 巻3 号 p. 75-79
    発行日: 2026/06/05
    公開日: 2026/06/05
    ジャーナル オープンアクセス

    Perclose ProGlide System(Abott-Vascular, Redwood City, CA, USA)は,遠位の柔軟性のあるシース部分と,近位の固いガイド部分で構成される.シースとガイドの接合部分は脆弱で,わずかな外力が加わることで破損する可能性があるとされる.症例は51歳女性.小脳テント部硬膜動静脈瘻に対して塞栓術を両側大腿動脈アプローチで行った.Perclose ProGlide Systemを用いて止血操作を行ったが,展開時にシースとガイドの接合部分が破損しシース部分が腹部大動脈内に遺残した.このためスネアカテーテルを用いてシースの先端部分を捕捉し,左大腿動脈から摘出を行い良好な結果を得た.

  • 若松 佳代, 尼子 真生, 早麻 政斗, 江石 惇一郎, 住 瑞木, 和田 秀一
    2026 年35 巻3 号 p. 81-85
    発行日: 2026/06/19
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,高齢患者の胸腹部大動脈瘤に対して,血管内治療が代替法として注目されている.症例は87歳女性.突然の背部痛が出現し,救急搬送となった.造影CTで最大短径63 mm,Crawford–Safi分類V型の胸腹部大動脈瘤を認め,切迫破裂と診断した.高齢であり人工血管置換術は手術侵襲が大きいと判断し,血管内治療を選択した.腹腔動脈は瘤から直接分岐し,瘤末梢から上腸間膜動脈までのシーリングゾーンは6 mmと不十分であった.そこで,上腸間膜動脈の温存を目的としてSandwich法を用いたTEVAR(thoracic endovascular aortic repair)を施行した.術後の造影CTではエンドリークを認めず,経過良好で術後7日目に自宅退院となった.胸腹部大動脈瘤に対してSandwich法を用いたTEVARは低侵襲治療の1つとして有用であると考えられる.

  • 小山 宗亮, 陽川 孝樹, 中川 卓, 田中 陽介, 吉田 和則, 脇山 英丘
    2026 年35 巻3 号 p. 87-90
    発行日: 2026/06/19
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    患者は77歳,男性.バイク走行中の転倒による右下肢外傷にて当院に搬送され,右脛骨および腓骨の骨幹部骨折の診断で創外固定が施行された.さらに同側下肢のコンパートメント症候群に対して減張切開が行われた.2週間後に髄内釘による脛骨整復術および減張切開部に対する左大腿部からの分層植皮術が行われた.その術後より大量出血を認め輸血を要した.造影CT検査で右前脛骨動脈中枢部の仮性動脈瘤と診断し,前脛骨動脈を結紮し止血術を行った.術後は植皮部の治癒を確認し,術後15日目にリハビリ転院となった.前脛骨動脈仮性動脈瘤の発生原因として鋭利な腓骨骨折遠位端による動脈へのストレスが疑われ,骨折を伴う下肢外傷ではかかる血管損傷が起こり得ることを念頭に置き,診療科間の連携と情報共有が必要である.

  • 大住 幸司, 長崎 和仁, 田中 克典
    2026 年35 巻3 号 p. 91-94
    発行日: 2026/06/19
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈性血管瘤(以下:venous aneurysm; VA)はまれな疾患で,肺血栓塞栓症の原因となる可能性があり,外科的治療が考慮される.膝窩静脈や腸骨静脈のVAの報告は散見されるが,大腿静脈VAは非常にまれである.今回われわれは大腿静脈に発生したVAの症例を経験したので報告する.症例は73歳,女性.立位で左大腿部と左鼠径部に膨隆を認め,精査により左鼠径ヘルニアと左大腿静脈VAと診断した.鼠径ヘルニアに対し鼠径切開法でヘルニア修復術を施行し,VAに対しては正常な静脈壁がほとんどみられなかったため,瘤切除,対側大伏在静脈による置換術を施行した.比較的早期にグラフト閉塞を認めたが,同側大伏在静脈を温存したために側副路が発達し軽度浮腫を認める程度で経過している.大腿静脈VAに対する治療では,再建術のみならず結紮術も含め,静脈還流動態を踏まえた個別化治療戦略が重要と考えられた.

  • 股部 紘也, 内田 敬二, 長 知樹, 富永 訓央, 伏見 謙一, 齋藤 綾
    2026 年35 巻3 号 p. 95-100
    発行日: 2026/06/19
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    連続2例の感染性胸腹部大動脈瘤に対して2期的に人工血管置換および大網充填・創部閉鎖術を行い救命しえたので報告する.症例1:70歳男性.1カ月前からの発熱,筋肉痛,体重減少を主訴に受診し,CT検査でSafi V型感染性胸腹部大動脈瘤の診断となった.抗菌薬治療開始6日目に手術施行した.術前血液培養陰性であったが術中培養から放線菌を認めた.創閉鎖時の術中培養では陰性であった.術後43日目に自宅退院となった.症例2:71歳男性.腹痛を主訴に前医受診し,精査の結果腹部ステントグラフト感染によるSafi IV型感染性胸腹部大動脈瘤の診断となり当科転院となった.抗菌薬開始後6日目に手術実施した.術前血液培養および術中培養で黄色ブドウ球菌を検出したが,2期目の術中培養,術後の血液培養で陰性確認した.術後63日目に転院した.

  • 井上 武, 森本 喜久, 大久保 知洋, 当广 遼, 山田 章貴, 宮本 直和
    2026 年35 巻3 号 p. 101-106
    発行日: 2026/06/19
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル オープンアクセス

    内腸骨動静脈瘻は稀な疾患であり,高拍出性心不全を来すことがあるが,弁膜症との鑑別は困難な場合がある.症例は82歳,男性.重症僧帽弁閉鎖不全症の術前精査中に右内腸骨動脈瘤に伴う内腸骨動静脈瘻を認めた.高拍出性心不全が強く示唆されたため,血管内治療を先行した.内腸骨動脈塞栓術および腸骨動脈ステントグラフト内挿術により心不全は改善した.その後11カ月で僧帽弁逆流が再増悪したため,低侵襲僧帽弁置換術を施行した.術後1年6カ月現在,心不全再発なく経過良好である.内腸骨動静脈瘻による高拍出性心不全を伴う症例では,血管内治療を先行する二期的治療戦略が有用である可能性が示唆された.

  • 村松 賢一, 高瀬 信弥, 黒澤 博之, 佐藤 洋一
    2026 年35 巻3 号 p. 107-111
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    胸部大動脈瘤破裂に対し胸部ステントグラフト内挿術を施行し,術後早期に食道穿孔を確認したため,胸部食道切除術および大網充填術を施行し救命し得た症例を報告する.62歳の女性.背部痛で来院.造影CT検査を施行したところ,胸部大動脈瘤破裂を認め緊急胸部ステントグラフト内挿術を施行した.術後早期に食道穿孔を認めたため,胸部食道切除術と大網充填術を施行した.経過観察中のCT画像ではステントグラフト周囲の炎症によるCT値上昇等が改善し,炎症反応の改善が認められたため二期的に食道再建術を施行し,人工血管置換術を施行することなくステントグラフトを温存し良好な結果を得た.

  • 北澤 直樹, 野 宏成, 加藤 寛城
    2026 年35 巻3 号 p. 119-122
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は78歳男性.前医で右鼠径部穿刺による左頸動脈ステント留置施行後,出血性ショックとなり当院へ搬送された.来院時,挿管状態でショックバイタルであった.造影CTで右外腸骨動脈からの出血および腹部コンパートメント症候群(ACS)と診断した.止血および腹腔内圧減圧目的にバルーンオクルージョン後,後腹膜アプローチによる手術を施行した.術翌日に人工呼吸器より離脱抜管し,2日目に立位達成,紹介元へ転院搬送となった.後腹膜アプローチにより開腹を回避したことで術後open abdomen management(OAM)が不要となり,早期抜管・離床が可能であった.

  • 鈴木 耕太郎, 佐藤 洋一
    2026 年35 巻3 号 p. 123-127
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は81歳女性.自室内で呼びかけに反応がない状態で発見されて救急搬送された.同日の頭部CTでは異常所見を認めず経過観察となったが,意識障害の遷延を認め,発症後2日目に造影CTを施行し急性大動脈解離Stanford A型と診断された.腕頭動脈から右総頸動脈にかけて血栓化偽腔による圧排で真腔血流が消失しており,意識障害の原因と考えられた.同日の頭部CTでも粗大な脳梗塞所見を認めなかったため緊急手術を施行した.開胸に先立ち右総頸動脈を露出し,人工血管を端々吻合して人工心肺からの送血を開始すると脳内酸素飽和度の上昇を認めた.その後開胸して部分弓部大動脈置換,腕頭動脈再建術を施行し,右総頸動脈へ吻合した人工血管も分枝に吻合して血行再建した.術後に脳梗塞所見は認めず,意識状態も改善した.頸動脈の血流不全を伴う急性大動脈解離では,症例ごとに治療戦略を立てることが重要であると考えられた.

  • 手島 健吾, 野村 陽平, 八木 萌香, 降旗 宏, 安達 秀雄
    2026 年35 巻3 号 p. 129-132
    発行日: 2026/06/30
    公開日: 2026/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    膝窩動脈瘤は末梢動脈瘤の中で比較的頻度が高く,血栓塞栓症や破裂を発症するが,神経圧排による神経症状を呈することは比較的稀である.症例は81歳男性.1カ月前からの左下肢脱力および感覚鈍麻を主訴に受診した.造影CT検査で30 mm大の左膝窩動脈瘤を認め,下肢MRI検査で瘤による総腓骨神経の圧排所見を認めた.神経伝導検査で左総腓骨神経の複合筋活動電位の低下を認めており,膝窩動脈瘤による総腓骨神経麻痺と診断した.動脈瘤による物理的な圧迫解除が症状改善に必要と判断し,後方アプローチによる外科的動脈瘤切除を選択した.自家静脈では動脈との口径差が大きく,不適であったため人工血管を用いた血行再建を行った.術後経過は良好で,下肢の脱力症状は消失した.膝窩動脈瘤に対する治療には,血管内治療,外科的治療があり,その際のグラフト選択は重要で,患者背景,病態,解剖学的特徴をふまえ適切な選択が必要である.

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