日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
最新号
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講座
  • 橋詰 賢一, 灰田 周史, 志水 秀行
    2026 年35 巻5 号 p. 225-235
    発行日: 2026/09/19
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル オープンアクセス

    胸部大動脈疾患に対する外科的治療は,この20年で大きなパラダイムシフトを迎えた.胸部大動脈瘤およびStanford B型大動脈解離に対する,胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR: Thoracic Endovascular Aortic Repair)は,低侵襲かつ有効性の高い治療法として普及している.標準治療は人工血管置換術だが,術中出血,人工心肺使用,術後合併症など高侵襲である.そのため高齢者や重篤な併存症を有する症例では高リスクで,治療選択に難渋した.2000年初頭から始まったTEVARは,日本でも2008年に保険収載され,2009年にはステントグラフト実施基準が策定.TEVARの成績・安全性が評価され,2020年改訂の「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」では,解剖学的条件を満たす下行大動脈瘤へTEVARが第一選択(class I)として推奨.一方,弓部,胸腹部病変へのTEVARは技術的難易度が高く,術式選択には慎重な判断が求められる.近年では,TEVARは単なる外科手術の代替ではなく,大動脈リモデリングを基盤とした生涯管理(lifetime management)戦略の中核を担う治療として位置づけられつつある.本稿では,最新の知見と自験例を踏まえ,大動脈瘤および大動脈解離に対する血管内治療の現状について概説する.

症例
  • 光岡 明人, 花塚 拓也, 中村 浩志, 井上 芳徳
    2026 年35 巻5 号 p. 237-240
    発行日: 2026/09/19
    公開日: 2026/09/19
    ジャーナル オープンアクセス

    生体腎移植後23年を経過した74歳女性.下血と血行動態の不安定化(血圧90/60 mmHg,脈拍100回/分)を認め緊急入院となった.造影CTにて左外腸骨動脈の移植腎動脈吻合部に最大径35 mmの仮性動脈瘤と,後腹膜への造影剤漏出を伴う破裂像を認めた.入院後18時間後に当科へコンサルトがあり,施設在庫状況および高度石灰化病変への圧着性能を考慮し,バルーン拡張型ステントグラフト(VBX)を外腸骨動脈に留置して緊急止血に成功した.術前より感染兆候を認めなかったため,術後抗菌薬の定期投与は行わず厳重なモニタリング方針としたが,術後1年間の経過でステント感染や再発は認めていない.移植後20年以上の超遠隔期においても吻合部破綻のリスクは存在し,緊急時の迅速な血管内治療は極めて有効な手段となりえる.

  • 山元 隆史, 茂木 健司, 櫻井 学, 藤井 政彦, 長濱 真以子, 髙原 善治
    2026 年35 巻5 号 p. 241-245
    発行日: 2026/10/20
    公開日: 2026/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    整形外科手術中の膝窩動脈損傷は稀であり,救肢率は以前と比較すると改善してきているが,依然として下肢切断率の高い病態である.症例は60歳の男性.前医で高位脛骨骨切り術を受け,術後下肢虚血を認め,当院へ転院搬送された.発症から6時間以上経過しており,膝窩動脈損傷と多量の血腫による下腿コンパートメント症候群をきたしていた.感覚障害と運動障害があり,緊急で血行再建と下腿筋膜切開術を施行した.膝窩動脈は一部の外膜を残し,離断されており,端々吻合にて再建した.損傷から再灌流までは10時間以上経過していたが,術後myonephropathic metabolic syndrome(MNMS)を発症することなく,軽度の運動障害のみで救肢することができた.損傷から長時間経過してからの血行再建はMNMSのリスクであるが,救肢可能な症例もあり,治療方針は慎重に判断する必要がある.

  • 大野 文也, 植村 翼, 永冨 脩二, 寺園 和哉, 向原 公介, 峠 幸志
    2026 年35 巻5 号 p. 247-251
    発行日: 2026/10/20
    公開日: 2026/10/20
    ジャーナル オープンアクセス

    IgG4関連大動脈瘤は,血清IgG4高値と全身臓器へのIgG4陽性形質細胞の浸潤および線維化を主体としたIgG4関連疾患に含まれる疾患概念であり,近年心臓血管外科領域での報告も増えつつあるが胸部大動脈での報告は少ない.今回,術前に血栓閉鎖型Stanford A型大動脈解離の診断で手術となり,術後にIgG4関連大動脈瘤と診断された症例を経験した.症例は64歳男性.造影CTで血栓閉鎖型Stanford A型大動脈解離の診断となり手術を行った.術中所見では,上行大動脈の外観は正常も周囲組織との癒着を認め,離断した上行大動脈壁は肥厚し明らかな解離所見は認めなかった.病理組織学検査では,外膜を中心にIgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化を認めた.血清IgG4は正常上限値であったが,その他の所見と合わせてIgG4関連大動脈瘤と確定診断した.同疾患は大動脈解離と類似する画像所見を呈するため注意が必要である.

  • 柳清 洋佑, 末永 大河, 小松 茂樹, 坂田 純一
    2026 年35 巻5 号 p. 253-257
    発行日: 2026/10/22
    公開日: 2026/10/22
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は72歳,女性.数カ月前より労作時呼吸困難を自覚し,症状増悪と起座呼吸を主訴に前医へ入院した.造影CTで最大径73 mmの巨大弓部大動脈瘤と左肺動脈の高度圧排を認め,前医では肺動脈圧排による右心不全と考えられていた.薬物治療で改善せず当院へ紹介となったが,再検CTで大動脈瘤の左主肺動脈穿破を認め,緊急でfrozen elephant trunk(FET)併用弓部置換術を施行した.動脈瘤瘻孔部に関しては瘤内での縫合操作が困難で瘤壁も脆弱であったため,直接閉鎖は行わずFETによる大動脈側からの瘻孔血流遮断を選択した.術後,肺動脈圧および右心負荷は改善し,造影CTでは瘤内血栓化を認め,瘻孔を介した明らかな造影剤流入は認めなかった.弓部大動脈瘤の肺動脈穿破は稀であり,肺動脈側への直接操作を行わず,FETによる大動脈側からの瘻孔隔絶により加療し得た1例を報告する.

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