【目的】保存的治療を行ったB型解離の患者で,慢性期に血管径が拡大する危険因子を明らかにすることを目的とした.【対象と方法】2004年7月から2016年4月までの間に当院で治療した急性B型解離127例中,保存的治療を第一とした104名を対象とした.【結果】104例中,血管径が拡大した36例(35%:E群)と非拡大群(U群:68例,65%)とを比較すると,拡大群では初診時の血管径が大きい(42±7 vs 36±7, p<0.01),血管径の拡大速度が速い(10±32 vs −3±19, p<0.05),chronic obstructive pulmonary disease(COPD)が多い(44% vs 25%, p<0.05)という結果であった.偽腔が開存型であること(p<0.05, 95% CI 0.407–0.935)と初診時の血管径が大きいこと(p<0.01, 95% CI 1.076–1.158)が独立した危険因子であり,とくに初診時血管径が40 mmを超えていた症例は慢性期に拡大しやすい傾向にあった(p<0.01).大動脈関連死回避率(1/5/10年)はE群:100/86/77%,U群:92/79/79%であり,差は認めなかった(p=0.747).【結論】血管径の拡大群,非拡大群の大動脈関連死回避率は良好な成績であった.慢性期の大動脈径拡大の第一の危険因子は初診時の大動脈径であった.