日本血管外科学会雑誌
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原著
人工血管を併用した大腿-下腿動脈バイパスの遠隔成績 : 自家静脈単独使用群との比較
江口 大彦岡崎 仁三井 信介
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2006 年 15 巻 6 号 p. 535-540

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抄録

下腿動脈バイパス術では自家静脈の使用を第一選択としているが, 自家静脈 (大小伏在静脈, 浅大腿静脈) 単独での完全血行再建が不可能な場合, われわれは人工血管を併用したバイパス術を行っている. 本研究では閉塞性動脈硬化症に対して行われた人工血管を併用した総大腿-下腿動脈バイパス術の遠隔成績を自家静脈単独使用群と比較検討し, その意義を考察した. 対象は1998年12月から2005年12月の間に施行した総大腿-下腿動脈バイパス術58例で, 人工血管使用 (PTFE-vein) 群28例と自家静脈単独 (AV) 群30例の, 患者背景, 術後成績, 遠隔開存率, 救肢率, 生存率を比較検討した. 患者背景では, PTFE-vein群は高齢 (76歳 vs 72歳) で高血圧の合併率 (71% vs 93%) が少なく, 再手術症例の頻度 (32% vs 7%) が高かった. その他の性別, 救肢手術の有無, ならびに高脂血症, 糖尿病, 虚血性心疾患, 脳血管障害, 腎障害, 悪性腫瘍の合併に差はなかった. 遠隔成績ではPTFE-vein群の1年一次開存率, 二次開存率, 救肢率は67%, 74%, 81%で, AV群は2年でそれぞれ83%, 90%, 100%で, 有意にPTFE-vein群が不良であったが, 両群の生存率に有意差はなかった. 以上の結果から, 総大腿動脈をinflowとする下腿動脈バイパス術において, 人工血管を併用した場合の遠隔成績は自家静脈単独の場合に比べて不良であった. しかし重症虚血肢の場合, 自家静脈単独でのバイパスが不可能でも, 長期開存で劣る人工血管を併用したバイパス術で救肢を目指すことで, 患者のquality of lifeを維持できる可能性があると考えられる.

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