2006 年 15 巻 7 号 p. 615-618
【背景】近年腹部大動脈瘤に消化管悪性腫瘍が合併する症例が増加傾向にあるが, 治療方針の選択に難渋する場合も少なくない. 【症例】58歳の男性. 直腸癌に対して骨盤内臓器全摘出術を施行した際, 人工肛門・回腸導管が造設された. その時点よりすでに腹部大動脈瘤が指摘されるも経過観察されるのみであった. 術後2年を経て瘤径の拡大に伴い腹部大動脈瘤に対し手術方針となった. 左側に人工肛門・右側に回腸導管が位置していたが, 左側後腹膜到達法を選択し直管型人工血管置換術を施行し得た. 【結果】術後経過良好でストーマに関するトラブルなく, 創部感染・人工血管感染ともに認めなかった. 【結論】腹部大動脈瘤・消化管悪性腫瘍合併例に対する手術ストラテジーは個々の症例に応じて慎重な選択が必要であり, 今後はステントグラフトも含めさらに選択枝が広がっていくものと思われる.