日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈瘤破裂症例の検討―救命率向上へ向けて―
瀬名波 栄信末永 悦郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2007 年 16 巻 4 号 p. 615-618

詳細
抄録
近年, 診断技術の向上および手術手技の進歩により腹部大動脈瘤(AAA)に対する手術手技は安定したものとなっているが, 破裂例はいまだ成績不良である. 今回, われわれは当院における腹部大動脈瘤破裂症例(RAAA)に対し臨床経過と治療成績を検討した. 1998年 7 月より2005年12月までに当院で行った腹部大動脈瘤手術症例は207例であり, そのうち腹部大動脈瘤破裂症例38例(男性27例, 女性11例, 平均74歳)で10例(26.3%)の手術死亡を認めた. 来院時ショックを呈していたのは25例で, 死亡群はすべてショック例であった. 生存群と死亡群を比較すると, 術前に意識障害(JCS-II 以上), ショック状態を呈した症例, 術中輸血量に関し有意差を認めた. 死亡原因では, 10例中 5 例が出血でそのうち 4 例が術中死であり, 多臓器不全が 2 例, 心筋梗塞が 2 例, 呼吸不全が 1 例であった. RAAAの救命率向上のためには迅速な診断, 手術待機時間の短縮が重要であり, 地域医療施設への啓蒙が重要であると考える.
著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top