日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
感染性腹部大動脈瘤に対する非解剖学的血行再建術の遠隔成績
田淵 篤正木 久男柚木 靖弘浜中 荘平稲垣 英一郎久保 裕司久保 陽司種本 和雄
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2007 年 16 巻 5 号 p. 653-659

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抄録
感染性腹部大動脈瘤に対する非解剖学的血行再建術の治療成績, 遠隔成績を検討した. 対象は 7 例で, 患者年齢は56~87歳(平均68.4歳), 全例男性であった. われわれの手術術式は, 非解剖学的血行再建術(腋窩-両側大腿動脈バイパス術 6 例, 両側腋窩-大腿動脈バイパス術 1 例)を施行した後, 大動脈瘤切除, 感染組織のデブリードマン, 大動脈および腸骨動脈断端の縫合閉鎖および大網充填術を行った. 術前, 全例発熱あり, 炎症反応亢進 5 例, 血液培養陽性は 4 例に認め, CT所見は全例で嚢状あるいは仮性大動脈瘤がみられ, 診断に最も有用であった. 感染性腹部大動脈瘤の原因菌は, Salmonella 4 例, Bacteroides 1 例, Klebsiella 1 例および不明 1 例であった. 術後早期合併症は後腹膜膿瘍, 大動脈断端離開 1 例, 感染性胸部下行大動脈瘤 1 例, 尿管損傷 1 例および肝障害 1 例であった. 病院死亡はなく, 全例軽快退院した. 術後遠隔期合併症は 1 例に左腎膿瘍をきたし, 術後14カ月目に左腎摘出術, ドレナージを行った. 両側腋窩-大腿動脈バイパス術を行った症例は片側のバイパス人工血管が閉塞し, 術後12カ月目に大腿-大腿動脈交叉バイパス術を行った. 転帰は 1 例が他病死, 1 例が追跡不能で, その他の 5 例は現在までに術後15~132カ月の経過観察で良好に経過している. 遠隔期に大動脈断端離開, 感染性動脈瘤の再発あるいは下肢虚血をきたした例はなかった. 感染性腹部大動脈瘤に対する非解剖学的血行再建術は, とくに動脈瘤破裂例や感染コントロール不良例において安全で有用な方法と考えられた. 治療成績もおおむね良好であり, われわれの治療方針は妥当であると考えられた.
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