日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
原著
腹部大動脈・腸骨動脈瘤破裂手術症例における予後因子と転帰の解析
福田 篤志久米 正純岡留 健一郎
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 16 巻 6 号 p. 751-757

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抄録

【背景】腹部大動脈瘤破裂は,救命率の低い重篤な病態であり,どのような因子がその転帰と関係するかに興味がもたれる.【方法】当院救命センター搬入症例における腹部・腸骨動脈瘤(AAA)破裂症例の割合と,救命例・死亡例における各予後因子の比較から,AAA破裂症例救命に寄与する因子を検討した.【結果】(1)2003年11月から2005年12月の当院救命センター搬入症例7327例中,来院時心肺停止例(CPAOA)は275例であった.このうちAAA破裂症例は6例であり,1 例を手術室に搬入し得たが,術中死で失い,CPAOAでの救命例はない.(2)また,1994年から2005年に,当院でAAA破裂で手術した43例で,救命は30例,在院死亡は13例(30%)であった.術前心肺蘇生施行例,術前ショック例,腎動脈より中枢での大動脈遮断施行例,出血量の多い例で,有意に死亡率が高く,術前循環不全が重篤であったり,血腫が広範であったことと関連していた.破裂 – 来院時間別の死亡率は,1時間以内 5 / 9(56%),1~3時間 6 / 10(60%),3~10時間 2 / 11(18%),10時間以上 0 / 13(0%)で,長い時間経過で搬入された症例は循環状態が安定して生き延びた症例であることを反映していた.執刀 – 遮断時間も死亡例で有意に短く,より切迫した循環状態での手術であることを示していた.【結論】AAA破裂症例の死亡率は,術前の循環不全の程度と強く関係しているので,院内救急体制や手術手技の評価を行う際には,在院死亡率のほかに,術前ショック症例における来院 – 執刀時間,執刀 – 遮断時間,大動脈遮断時間などを指標とすべきと思われた.

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