抄録
症例は89歳男性.数分の意識消失を伴う突然の前胸部痛を訴え近医受診.大動脈解離を疑われ当院へ搬送.造影CTでは弓部大動脈を中心とした血腫を認めたが,大動脈解離,動脈瘤はなく,特発性大動脈破裂と診断した.高齢,心疾患の既往,弓部大動脈の高度石灰化があり手術は非常にハイリスクであり,来院時,意識レベル,血行動態が保たれていたため,保存的に加療することにした.治療方針は,急性Stanford B型大動脈解離の治療に準じた.29病日に自宅退院した.現在,2 年を経過し外来通院中である.外科治療が基本であるが,ハイリスク患者の場合,保存的治療という選択肢もあり得ると考えられた.