抄録
Y型人工血管置換術後に再発性の細菌性末梢塞栓をきたしたgraft–enteric erosionの 1 例を経験した.症例は71歳男性,AIODにてY型人工血管バイパス(on lay)術施行,4 年後に発熱,足部の紫斑,下腿筋間の膿瘍をきたした.最終手術前の 2 回の入院時は画像上,グラフト周囲膿瘍など典型的なグラフト感染像を認めず,血液培養もすべて陰性,抗生剤投与で解熱,炎症反応も陰性化したため経過観察とした.3 回目の発症時はグラフト一部の閉塞,グラフト周囲の液体貯留を認め,グラフト感染と診断し手術を施行.Y型人工血管の分岐直上の部分で 2 × 2.5cmにわたりグラフトの腸管内露出を認めた.全グラフトを除去,両側腋窩—大腿動脈バイパス術を施行し救命,救肢できた.Graft-enteric erosionは診断が困難な場合も多いが,本症を念頭に置きCTによるグラフト—腸管の関係の詳細な検討が重要である.