2008 年 17 巻 5 号 p. 545-550
【背景】他科で行う手術において血管処理が困難であったり,切除や再建が必要になったりする場合は,血管外科医と協同で手術を行うことがある.自験例を検討し,どのような状況で必要であったかを分析し検討を加えた.【方法】1992年から現在までに他科の手術患者で血管外科手術手技を必要とするため協同で手術を行った患者28例につき検討した.産婦人科 6 例,泌尿器科 3 例,小児外科 1 例,耳鼻科 1 例,整形外科 1 例,消化器外科16例であった.これらの患者に対し,術中血管損傷例は損傷血管の修復を,動注ポートトラブル例にはポート抜去と血管修復またはバイパスを,悪性腫瘍の血管浸潤に対しては血管合併切除と血行再建を行った.【結果】血管損傷は全例修復し得たが,静脈損傷による出血のコントロールが動脈より困難であった.感染したポート留置患者の死亡率は40%と高かったが,感染のない患者では死亡例はなかった.悪性腫瘍の血管合併切除例は,拡大切除による合併症や死亡率の増加はなかったが,QOLの改善は得られたものの,腎癌以外は遠隔期成績の改善は困難であった.【結語】他科に必要とされる血管外科手術手技は,1)術中の血管損傷,2)カテーテル留置に伴う血管関連合併症,3)悪性腫瘍切除に伴う血管切除・再建,に分類される.感染を伴う血管関連合併症の予後は不良である.悪性腫瘍の血管合併切除は安全に行えるが,生命予後の改善は現時点で明確なのは腎癌のみと思われた.