日本血管外科学会雑誌
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症例
待期的腹部大動脈瘤術後に脊髄虚血による対麻痺を発症した 1 例
江口 大彦川崎 勝己
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2008 年 17 巻 5 号 p. 587-592

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抄録
待期的腹部大動脈瘤術後に脊髄虚血による対麻痺を発症した 1 例を経験した.患者は81歳の男性.最大径 6cmの腎動脈下腹部大動脈瘤と左総腸骨動脈瘤,左外腸骨動脈閉塞に対し待期的に手術を行った.両側腎動脈下で大動脈を遮断しY型ダクロン人工血管を用いて再建を行った.中枢側は腎動脈下腹部大動脈と端々吻合,グラフト右脚は総腸骨動脈に端々吻合し,グラフト左脚は左内腸骨動脈に端々吻合した.グラフト左脚にグラフトを端側吻合し左総大腿動脈にバイパスした.下腸間膜動脈の再建も行った.手術時間は 4 時間26分,出血量は1141g,中枢遮断時間は40分で,循環動態は安定していた.術後 1 日目より両下肢の運動麻痺と温痛覚麻痺を認め,術後 6 日目にMRIにてTh11-L1レベルの脊髄梗塞を確認し,前脊髄動脈症候群と診断した.機能回復訓練にもかかわらず術後約 6 カ月の転院時まで下肢運動機能はほとんど改善しなかった.
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