抄録
膝窩動脈捕捉症候群の診断に64列MDCTが有用であった 1 例を経験したので報告する.症例は42歳の男性.主訴は運動時の間歇性跛行.数年前より主訴あり近医受診したところ,右下肢の動脈触知減弱を指摘されたため,精査加療目的に当科紹介受診.右足背動脈と右後脛骨動脈の動脈触知は減弱しており,ABIは右0.70,左1.00であった.術前MDCTでは右足の腓腹筋内側頭の起始部が外側頭よりに偏位しているため,内側筋が膝窩動脈をまたぐ形になり,そのために膝窩動脈が閉塞しておりDelaney分類のII型の膝窩動脈捕捉症候群と診断した.手術は自家大伏在静脈を用いた膝上膝窩動脈-膝下膝窩動脈バイパス術を施行した.術後経過は良好であり術前0.70であったABIは1.00に回復し,主訴も消失した.64列MDCTのような画像診断装置の進歩により,低侵襲で正確な診断が可能であった.