2009 年 18 巻 4 号 p. 529-533
【背景】再発リスクの高い肺血栓塞栓症に一時的下大静脈フィルターを留置することは有用であるが,一時的下大静脈フィルターによる合併症も報告されている.【症例】79歳,女性.主訴は労作時呼吸困難.【結果】画像診断より深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の所見を得た.血中プロテインS活性が低下しており,プロテインS欠乏症と診断した.一時的下大静脈フィルターを留置し,血栓溶解療法,抗凝固療法を開始したが,入院13日目に施行した下大静脈造影にてフィルターの完全血栓閉塞を認めた.カテーテル血栓溶解療法およびカテーテル的血栓吸引除去術を試みたが,その際造影剤の血管外への漏出を認め内科的な抜去は困難と判断され,開腹下に下大静脈結紮術を施行した.術後 2 日目に軽度の両下肢腫脹を認めたが,増悪傾向なく術後第20日目に独歩退院した.【結論】本例のような合併症は稀ではあるが,一時的下大静脈フィルター挿入の際には留意する必要がある.